HelmとKubernetes環境とWebRTC音声ボットへの挑戦
- 15 Dec, 2024
ジムへ向かう車中での雑談第8回目。
「Helmってどんな時に使うの?」というインフラ系の話題から始まり、RustでWebRTCボットを作ろうというテック満載の内容となりました。
竹内さん(@rikson_en)が、ここ最近ずっと取り組んでいるRustプロジェクトの進捗や課題も紹介していきます。
Helmを使うシーンは?
まずはHelm。HelmはKubernetes上でのパッケージマネージャ的存在で、複数のKubernetesマニフェスト(Deployment、Service、Ingressなど)を「一まとめ」にして扱えるツールです。
なぜHelm?
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一元管理: Helmを使えば、関連するKubernetesリソースをチャートという単位で管理できます。
インストールやアンインストールが一括で行えるため、ゴミリソースが残らず、環境がクリーンに保てることができます。 -
ローカルでの試験運用: ECS(Amazon Elastic Container Service)などではローカル再現が難しい一方、Kubernetesは「kind」や「minikube」といったツールでローカル再現が可能。 これにHelmを合わせれば、ローリングアップデートや無停止デプロイ手順をローカルで試すのも容易です。 つまり、実プロジェクトでECSを使っていても、ローカルでKubernetes+Helmを用いてテスト環境を構築し、挙動を確かめるといった使い方があるわけです。
RustでWebRTCボットを作る?
話は一転して、竹内さんが取り組んでいるRustプロジェクトへ。
彼は、WebRTCを使って「ズンダモン」というキャラクターとリアルタイムな音声対話を可能にしようとしているんです。
なぜRust?
- Rustは高性能かつメモリ安全性が高い言語で、C/C++のライブラリとも相性が良い。
- Whisper.cpp(OpenAIのWhisperをローカルで動かすためのC++ライブラリ)やVoicevox(日本語音声合成)といったネイティブライブラリとの統合がしやすい。
システムの構成(予定):
- 音声入力(WebRTC):
ブラウザからマイク音声をWebRTC経由でRustサーバへ送信。 - Speech-to-Text(Whisper.cpp):
受け取った音声をWhisper.cppをRustから呼び出してテキスト化。 - ChatGPTに問い合わせ:
テキストをChatGPTに渡し、ズンダモンのキャラクター口調で回答を生成。 - Text-to-Speech(Voicevox):
ChatGPTから得たテキストをVoicevoxで音声合成し、ズンダモンが話す音声を作成。 - WebRTCで音声返却:
GStreamerを通して生成した音声をWebRTCでブラウザに送信。
上記の手順で、ユーザーはブラウザ上で「ズンダモン」と自然な音声対話を楽しめるようになります。
開発中の課題
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ライフタイムと借用の概念(Rust特有の壁):
Rustでは所有権や借用、ライフタイムといったメモリ管理の仕組みが厳格。並行処理やスレッドセーフ性を保つためにコンパイラから怒られることもしばしば。竹内さんもここで苦戦している様子でした。 -
サンプルの少なさ:
Whisper.cpp+Voicevox+GStreamer+Rustといった組み合わせは珍しく、既存のサンプルが少ないため、手探りでコードを書く必要がある。 -
WebRTC周りのシグナリング:
当初Janusを使おうとしていたが、Rustでの実装が思うようにいかず、GStreamer側のシグナリングサーバーを活用する方針へシフト。
HelmとRust、異なる世界のテック融合
今回の雑談は、HelmによるKubernetes環境管理から、Rustによる音声対話ボットの開発という、異なるテクノロジー領域の話を行き来しました。
- Helmはインフラ側の運用・管理の話で、安定した環境構築・破棄・再構築がやりやすい。
- Rustプロジェクトは、音声認識・合成・WebRTCといった応用的な分野への挑戦。 どちらも「安全・効率的な実装」という共通点があり、最終的にユーザーエクスペリエンスを向上させるための手段と考えれば、方向性は同じです。
まとめ
HelmはKubernetes環境でこそ力を発揮し、ローカル検証やクリーンなリソース管理を可能にします 一方、RustでのWebRTCボット構築は、メモリ安全性・パフォーマンスを活かした統合が魅力的。 まだ道半ばですが、竹内さんの取り組みは、オープンソース技術を組み合わせた新たな音声対話インターフェースを目指しています。
次回は、Rustプロジェクトがさらに進展するかもしれませんし、Helmを使った新しいインフラ管理手法が飛び出すかもしれません。引き続き、テックと筋トレの両輪で突き進んでいきますので、お楽しみに!