【読書】サピエンス全史(下)を読んだ

サピエンス全史(下巻)を読んだ。面白かった。なんだか上巻より難しかった気がする。私の知らない代名詞が多かったためかもしれない。

科学と帝国主義と資本主義の融合

この五百年で、科学技術は飛躍的に発達し、我々の生活は大きく変わった。西暦1000年と1500年ではそれほど大きな変化はなかったが、五百年前と今ではかなりの違いが出ている。

それは、ひとえに科学技術の飛躍がライフスタイルを変えたためだが、科学技術の発展の裏には帝国主義と資本主義の躍動があったようだ。

科学技術を発達させるには、莫大なお金が必要で、さらには、発展させるベクトルを政治やイデオロギーで補強する必要がある。

例えば、核爆弾の開発には、いくら費用が発生したのかはわからないが、莫大な費用が費やされたのは確かで、政治がそれを後押しした。

また、現代の遺伝子工学にせよ、かなりの予算が費やされ様々な技術が開発可能になっているが、文化的人道的(?)な理由で、方向性を制限されている。(人間のクローンが禁止されているように)

その他、科学技術とお金とイデオロギーは現在でも、切っても切れない関係で、それぞれがフィードバックループの形で、発展・変化しあい融合しているようだ。

核兵器と経済による平和

現在は、人類の歴史始まって以来、最も平和な時代なのだそうだ。何故なら現在はほとんど戦争が発生しない時代だからだ。テロや民族紛争等がまだあるし、全くな戦争がないわけではないが、少なくとも1945年以降、侵略戦争はほぼなくなっている。

素晴らしい時代である。太平洋戦争あたりの映画などで、若者は戦争に無理やり行かされ、死んだり、手足がなくなったり、家族を亡くしたりしていた。

戦争がない時代の方が良いに決まっている。そういった意味では現在は本当に素晴らしい時代だ。

そして、何故この平和が維持されているかについてもしっかり理解する必要がある

それは、科学技術と経済がかなり大きく影響している。

核兵器を持つ国が増えたため、戦争=核戦争ということになり、戦争をすると、莫大な費用と被害が発生することになった。もともと戦争は政治の一部であり、宗教的なものだったりお金のために発生しているが、核戦争となると、自国も他国もかなりの被害が発生し、デメリットがかなり大きく、他国を侵略したとしてもそのメリットは現在はなくなっている。

何故なら現代の場合、国が持つ資源とは人的資源と技術のため、侵略先からそれを奪い取ることができないからだ。

そして、平和が続けば、戦争は影を潜め、交易が盛んになり平和の利益と戦争の代償はさらに大きくなる。

これらがフィードバックループとして、現在の平和が維持されているようだ。

文明は人間を幸せにしたのか

上記のように、科学技術や政治経済により生活水準は格段に上がったが、それは人を幸せにしたのかというと、はっきりしないところだ。

なぜなら人間の幸福度とは、客観的なものではなく、主観的なもののため、生活が良くなったからといって幸福度が高くなるとは限らないからだ。

それに、幸福度には上限があり、生活水準のように、どんどん上がっていくようなものではない。

さらに、生化学的にみると幸せの度合いは脳内のセロトニンやドーパミンの量で決まり、その上限や閾値はそれほど生活水準に依存しない。そして、脳内物質の量は普通の生活では、体温のように一時的に上昇することはあっても、そのうちすぐに一定値に戻るもののようだ。

ならば、脳内物質を薬物で調整し常時幸せ状態を作り出すのが幸せなのかというと、どうもそうでものないようだ。

経済ノーベル賞受賞したダニエル・カーネマンの研究で、幸福とは、不快な時間を快い時間が上回ることではないとわかってきた。例えば、子育てのための作業(オムツを替えたり等)を楽しいと感じる親は少ないが、ほとんどの親は子供こそ幸せの源泉だと断言する。

つまり、幸せかどうかは、本人の人生が有意義で価値のあるものかどうかに関わっているらしい。

そしてその価値は、時代によって変わるし本人の意思によっても違ってくる。つまり固定された絶対的なものではなく、幸せとは、本人にとって価値ある幻想を信じそれに向かって進んで行くことに他ならないのではないだろうか。

つまり幸せになるには、コーチングにあるように、ゴールを設定しそれに向かって進んで行くのが重要ってことだろう。

以下、本書からの引用である。

人々が自分の人生に認める意義は、いかなるものもたんなる妄想にすぎない。中世の人々が人生に見出した死後の世界における意義も妄想であり、現代人が人生に見出す人間至上主義的意義や、国民主義的意義、資本主義もまた妄想だ。

それならば、幸福は人生の意義についての個人的な妄想を、その時々の支配的な集団的妄想に一致させることなのかもしれない。

今後のサピエンス

本書は将来の我々についても言及しており、科学技術が現在のサピエンスを別の種に進化させるだろうとのことだ。

これは、以下の苫米地先生の書籍と似たような内容だった。

[www.exp-cards.net](https://www.exp-cards.net/entry/Japanese-after-100-years)

近くに人類は不老不死になり、脳は電脳化される。そして、個人と全体の境界線上は曖昧になる。その思考は、私個人の思考なのかそれとも我々全体の思考なのか曖昧になって行くようだ。

おわりに

興味深い内容で面白い本だった。なんだか読み進めるにしたがって自由になった気すら感じた。もう1、2回ほど時間を見つけて読んでおきたいところだ。

先月、サピエンス全史の続編である「ホモ・デウス」が発売されている。こちらもチェックしておきたい。