敗戦から再挑戦へ:AIブラウザ時代の検索UXとガードレール設計

日曜夜の車内は、いつものざっくりした準備と、いつも通りの温度感で始まる。冒頭、竹内が先週末のキックボクシングの試合について報告。判定は負け。YouTubeにアップした試合動画を見てもらえれば早いけれど、悔しさと清々しさの混ざった声色で、近いうちの再チャレンジを宣言していた。負けの話から入っても、空気は沈まない。技術と日常を同じテーブルに並べて語るこの番組では、その悔しさも次の改善の話題に自然と接続されていく。

Atlasは検索か、回答か

本編の技術パートは、ChatGPTのAIブラウザAtlasから。Macで試せるようになったので、僕はさっそくインストールして触ってみた。最初に感じたのは、アドレスバーに打ち込むたびに検索というより回答が返ってくるUXのねじれだ。いまはキーワードを投げてまず検索結果の一覧がほしい、という局面が確かにあって、そこを即座にGoogleへ切り替える導線や設定が見当たらない。ヘルプにはそれらしいメニューが記載されているのに、実際のUIに存在しない項目もあり、仕様やドキュメントの整合はまだ過渡期という印象だ。

一方で、Atlasが売りにしているブラウザ操作の自動化は面白い。フォーム入力の肩代わりのような定型作業は、エージェントに任せた瞬間スッと摩擦が減る。とはいえFigmaのテーマ変更のような、文脈を理解したうえで複数手順を調整するタスクは、今の段階では歩留まりが悪い。結局、今日の仕事で即戦力にするなら、Chromeに拡張を積む構成が一番バランスがいいというのが僕の結論だ。

Claude拡張で分かる、最短距離の自動化

ここで竹内が取り出したのが、実験的なClaudeのChrome拡張。前職の給与明細SaaSにログインして、月別の明細PDFをまとめて落とす一連の操作を、拡張経由でサクッと自動化してしまったという。まさに手でやるには面倒、でも専用スクリプトを起こすほどでもない領域の真ん中を突く使い方で、こういう微粒な摩擦を減らせる体験は確かに効く。オートメーションというとすぐにヘッドレスブラウザとスクリプトに走りがちだが、まず拡張で済むならそれが最短距離だ。

AIブラウザ乱立と現場のテスト現実

PerplexityのCometやArc系の潮流など、AI支援の色が濃いブラウザが増えている。ただエンジンは多くがChromiumに収れんし、拡張の互換も広い。健全な競争は歓迎だが、乱立はフロント側のテスト負荷として跳ね返る。デスクトップでSafariを主に使うユーザーは多くないとしても、iOSとiPadOSの存在がSafari対応を必須にする現実は変わらない。Firefoxはシェアで苦戦しつつも、堅い支持が残る。開発現場の観点では、まずChromeとSafari、余力があればFirefoxまで。Atlasを正式にターゲットに含める日は来るのか、という会話で僕らは少し笑った。

個人開発ログ:ダイエットアプリにSentryを

竹内の個人開発も進んでいる。対象はダイエット支援アプリ。昨日はモニタリングを仕込んだらしい。最初はNew Relicを試したものの、React Nativeのビルドでつまずき、今回はSentryへ切り替え。Datadogは個人利用だと料金が重い、という判断も現実的だ。事故ってから計測を入れるのでは遅い。早い段階でエラーログの設計思想を決め、通知ノイズを制御する。ここを先にやっておくと、後の運用の腰が据わる。

CIはすでに整っていて、次はCDとTestFlight配布のパイプライン。来週には現段階のデモを触ってもらえるかもしれない、という。プロダクトの未確定要素はまだ多いが、観測と改善のループが回り始めたときの空気は悪くない。

ガードレールをどう設計するか

もう一つの検討テーマが、アプリ内で使うLLMのガードレール。プロンプトのトークン制限や、プロンプトインジェクションへの耐性は外せない。番組では、単一のシステムプロンプトに制約を書くだけでなく、別の軽量モデルを使った一次判定や多段チェックをどう組み合わせるかを議論した。出力をそのまま返さず、別のエージェントで検閲する構成は精度の底上げに効く。ただしチェックにもトークンは消費される。安価モデルで一次フィルタをかけ、濫用の動機を削ぐ設計が、個人開発のコスト感と安全性のバランスとして現実的だ。今回のスコープでは、ダイエット領域外の質問は答えないといった基本ガードから入るのが良さそうだ。

まとめと次回

試合は負け。それでも次に向けた改善が始まる。Atlasには違和感が残るが、ブラウザ操作の自動化という方向性は確かに光る。現場で使うなら当面はChromeと拡張の組み合わせが堅い。竹内のアプリは観測基盤が入り、いよいよテスト配布の準備へ。安全運用のためのガードレールも、無理のない形で組み立てが進む。来週はデモの手触りと、キックボクシングの再挑戦計画の続報を持って、また車内から。

参考リンク

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