皆さん、スクワットやっていますか?
筋トレ習慣のある方は、週に1回、足トレの日を設けてバーベルスクワットを行うという方も多いと思います。
スクワットは「筋トレの王様」と呼ばれるほど効果が高い一方、1セット終わるだけで吐き気やめまいを感じるほどハードな種目ですよね。
(画像引用元:Nick Mascioli squat by ljgoyke, on Flickr)
一口にバーベルスクワットといっても、バーベルを担ぐ位置によって大きく2種類に分けられます。
- ハイバースクワット
- ローバースクワット
バーベル担持位置が僧帽筋上部(頚椎付近)に近いか、三角筋後部(肩甲棘付近)に近いかでフォームが変わり、結果として動作パターンや使われる筋肉も異なります。この記事では、両者の特徴や科学的な比較をもとに、初心者から上級者まで役立つ情報をまとめました。
ハイバースクワット
特徴とフォーム
ハイバースクワットでは、首の付け根(頚椎7番付近)の僧帽筋上部にバーベルを置きます。このバー位置の高さにより、比較的直立姿勢で行いやすいことが最大の特徴です。
- スタンス幅: 股関節幅程度
- つま先角度: やや外向き(約15度)
- 重心位置: 足底中央(midfoot)より前に出にくく、比較的コントロールしやすい
膝関節の屈曲が大きくなりやすいため、**大腿四頭筋(特に大腿直筋や内側広筋)**への刺激が大きくなります。スクワットの深さが深くなると、前面の筋活動がさらに高まるという研究結果もあります。
メリットとデメリット
- メリット
- 初心者向き:フォームが比較的シンプルで習得しやすい
- 前腿を強化:大腿四頭筋に高い負荷がかかる
- 上半身の前傾が少ない:腰への剪断力がローバースクワットよりは少なめ
- デメリット
- 頚椎への圧迫:バーを高い位置に担ぐため、首や僧帽筋への圧迫が大きい
- 最大挙上重量:ローバースクワットに比べると扱える重量はやや下がる傾向 EMG研究では、ハイバーで大腿四頭筋の活動がローバー比で平均24%増加すると報告されています。
ローバースクワット
特徴とフォーム
ローバースクワットでは、三角筋後部上縁(肩甲棘付近)にバーベルを担ぎます。バー位置が後ろに下がることに加え、体幹の前傾角度がハイバーより大きくなるのが特徴です。
- スタンス幅: 肩幅より広め(1.2〜1.5倍)
- つま先角度: やや広め(30〜45度)
- 重心位置: より後方にシフトし、前傾姿勢を保つ
股関節主導(ヒップヒンジ)の動作が強調されるため、大殿筋やハムストリングスといった腰から太もも裏側にかけての筋群が強く刺激されます。また、股関節の可動域が大きくなるぶん、より重い重量を扱いやすいといわれています。
メリットとデメリット
- メリット
- 臀部・ハムストリングス強化:大殿筋とハムストリングスの活動量がハイバー比で約32%増加
- 最大挙上重量:パワーリフティングなど競技では主流。高重量に向いている
- ヒップライン改善:お尻の形を作りたい人に最適
- デメリット
- フォーム難易度が高い:前傾姿勢の制御が必要で、腰への負荷も増大
- 肩や肘の柔軟性が必要:バーを低く担うため、肩関節後方が硬いと痛みが出るケースもある
- 腰痛リスク:腰椎部にかかる剪断力が増すため、注意が必要
パワーリフティング競技者の約89%がローバースクワットを採用し、ハイバーに比べて平均12%重量が高いとの報告があります。
2つのスクワットの選び方
初心者はハイバースクワット
初心者の方は、まずはハイバースクワットが無難です。理由としては、
- フォームが習得しやすい
- 大腿四頭筋を中心に鍛えやすい
- 腰痛リスクが相対的に低い
膝をしっかり曲げるフォームを覚え、大腿四頭筋を強化することで、スクワット動作自体の基礎を固められます。
中級者〜上級者はローバースクワットに挑戦
スクワットに慣れてきたら、ローバースクワットにも挑戦してみましょう。
- 臀部やハムストリングスをより強化したい
- パワーリフティングで高重量を目指したい
- 体幹の前傾をしっかりコントロールできる
このような場合にはローバースクワットが有効です。ただし、腰や肩回りの柔軟性に欠ける人は無理をせず、ゆっくりとフォームを固めるか、補助エクササイズ(ヒップヒンジ練習、肩甲骨周りのストレッチなど)を取り入れてからの導入をおすすめします。
デッドリフトとの兼ね合い
ローバースクワットでは、ハムストリングスや大殿筋など「腰から太もも裏」を大きく使います。これはデッドリフトと被る部分が多く、連日行うと筋肉痛や疲労が蓄積しやすいです。
- ハイバースクワットとデッドリフト:筋活動の重複度はやや低め
- ローバースクワットとデッドリフト:腰・ハムストリングスへの負担が大きい
そのため、デッドリフトとローバースクワットを同じ週に組み込む場合は、数日間インターバルを置くのが無難でしょう。
おわりに
スクワットを始めた頃は、「バーベルを担ぐ位置」によってこれほど動作パターンが変わるとは思わないかもしれません。しかし、担ぐ位置の違いは重心位置・筋活動・可動域などに大きな影響を及ぼします。
- ハイバースクワット
- 前腿(大腿四頭筋)を中心に鍛えたい
- 比較的安全にフォーム習得したい
- ローバースクワット
- お尻やハムストリングスをより強化したい
- 高重量に挑戦してみたい
目的や柔軟性、競技特性などに応じて、自分に合ったスクワットを選択することが大切です。もし両方できるなら、週ごとやプログラムのフェーズごとにフォームを変化させてみるのも一つの手です。上手く使い分けて、脚と腰まわりの筋力強化に役立ててください。
参考文献・研究データ
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筋電図(EMG)分析において、ハイバースクワットは大腿四頭筋の活動がローバー比で平均24%高い。
参考文献1(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7739732/) -
パワーリフティング競技においては、ローバースクワットが約89%採用されており、最大挙上重量がハイバー比で平均12%高い。
参考文献2(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7289144/)
両者の差異を理解し、正しいフォームを身に付ければ、スクワットは非常に大きなリターンをもたらしてくれます。ぜひ、自分に合った方法で「脚の王様」と呼ばれるスクワットに取り組んでみてください。